日本は第二次世界大戦から復興し、高度経済成長期を経て経済大国にまで上り詰めました。
それぞれの分野での製造業の躍進が大きく関係していますが、大量な生産・消費に欠かすことができなかったのが「ライン生産」です。
これは生産方式の種類の1つであり、日本の経済成長を支えたといえますが、時代の流れにより人々のライフスタイルや価値観が変化した今、このライン生産が効率的とは言えなくなっています。
そこで、ライン生産方式とはどのような生産方式なのか、今の生産方式はどうなっているのかご説明します。
ライン生産とは、1つの製品をそれぞれの担当者が流れ作業で完成させていく生産方式のことです。
1つの製造ラインですべての工程を完結させる方式であり、1913年にアメリカの自動車メーカー・フォードが導入したことがきっかけとなっています。
ベルトコンベアを使った流れ作業で生産効率が大きく向上し、コストを大幅に削減しながら大量生産を実現させました。
フォードの業績向上に大きく貢献した生産方式といえますが、ライン生産方式にはデメリットもあります。
製造ラインに人員を配置し、それぞれが決まった工程だけを行っていきます。教育コストも抑えることができ、一定の速さで稼働するラインにのって作業が進むので、正確に生産量を把握できることもメリットです。
しかし生産ライン方式を作るためには、時間とコストがかかる上、工場のスペースもラインが占有することになります。
長期に渡り、同じ製品を作り続けるのならポテンシャルが最大限発揮される方式ですが、局所的な作業なので作業員の技量向上は望めません。
単純作業を延々と続けなければならないため、業務や仕事に対する意欲が低下してしまい、離職者を増やすことにもつながりやすくなるでしょう。
さらに1つの工程に不具合が発生すれば、すべての工程にその影響が及びます。
たとえ人を増員したとしても、生産性を向上させることにはつながらない上に、細かな仕様変更でラインを停止させることや、多品種に適応させることはできないといったデメリットもあります。
現在ではライン生産方式ではなく、セル生産方式や最新技術を駆使した新たな生産方式が取り入れられるようになりました。
セル生産方式とは、1人または少人数で1つのユニットとなり、組み立てから完成まで担当する生産方式です。
一拠点ですべての工程を行うケースや、U字型のセルと呼ばれる設備で必要な部材や機器を並べ、チームで製造するといったケースがあります。
セル生産方式の場合、作業に係るそれぞれの人員の裁量が大きく、業務を行う上でのモチベーションや責任感が高まりやすいことがメリットです。
1990年代からは、自動車メーカーのボルボなどがライン生産方式からセル生産方式に切り替えました。結果、生産性も向上し、離職者も減少したとされています。技能も向上させることができるため、現場も活性化しやすいといえますが、高い技術を要求されるため作業者への教育コストはかかってしまいます。
他にもICTやIoT、AIなどを現場に普及し、より効率化させる生産方式がだんだんと広がっている状況です。