陸運では自動車や鉄道が運送に用いられますが、海上を運送するときには船舶が用いられます。
海上の運送は、陸よりもたくさんの荷物を迅速に運送可能となるメリットがある半面、万一事故が発生したときの損害や損失は莫大なものとなってしまいます。
そのため万一船舶が海上で事故に遭遇したときに備え、事前に船舶・積荷による洋上のリスク集団を構成し、安全を確保する対策を講じる必要があるといえるでしょう。
一般的に海難事故の事前対策として考えられるのは海上保険などですが、転嫁するリスクと保有するリスクの区別をした上での備えが必要です。
リスク自体を減少させるのではなく、損害を他者に担わせることがリスク転嫁です。
一般的なリスク転嫁の方法として考えられるのは保険への加入ですが、他にも保険に類似する共済なども該当します。
また、民法上の保証や相殺などもリスク転嫁に含まれるといえるでしょう。
リスクに起因する損害について、内部留保で対処することがリスク保有です。
事前に用意する準備金や引当金が保有したリスクに充てられることとなりますが、超過す
る分は損失として発生することになるため、別途借入金などで対応が必要になる可能性もあります。
リスクへの対応と発生するコストにより、意識して保有するリスクもあれば、無意識に保有してしまうリスクもあると理解しておきましょう。
リスク保有は、どの程度、科学的・合理的に洗練したリスク評価ができているかが重要です。過去の事例や経験的な観察に基づき、合理的に損害の発生によるリスクを見積もることはできるでしょう。
ただ、海運はリスク保有が難しいと考えられるほど、大きな損害が想定されます。小規模な事故であればリスク保有が可能でも、それ以外はリスク転嫁を検討するしかないというのが現状といえます。
リスク転嫁の手段として考えられるのは、保険や協同組合による共済事業などですが、いつ・どの程度の損害が顕在するのか分析した上で検討が必要です。
さらにすべてのリスクを保険に転嫁できるわけではないため、備えることが可能となる部分にも限界があることを踏まえておく必要があります。
また、保証契約や相殺契約などでリスク転嫁する方法もありますが、たとえば海上輸送の固有制度といえる共同海損などが例として挙げられるでしょう。