平成元年(1989年)に廃止された法律に「通運事業法」がありますが、この法律の中で、鉄道による物品運送に伴い貨物の積み下ろし・集配・運送の取り扱いなど行う事業として「通運事業」が定義されていました。
「通運事業法」による呼称だった「通運事業」は、現在では「貨物利用運送事業」に含まれています。
そこで、今はなくなった「通運事業法」と、この法律が廃止されるきっかけとなった「貨物運送取扱事業法」について解説していきます。
「通運事業法」とは、昭和24年(1949年)に公布された法律であり、
・通運に関する秩序確立
・通運事業における公正な競争の確保
・通運事業の健全な発達
・鉄道による物品運送の効率の向上
を目的として制定された法律です。
平成元年(1989年)に「貨物運送取扱事業法(現貨物利用運送事業法)」が成立したことで廃止されました。
「貨物運送取扱事業法」とは、道路運送事業法・通運事業法・航空法・海上運送法・内航海運業法などの「運送事業法」ごとに規定されていた運送取扱事業の制度を、事業規制の簡素化・合理化を目的として一本化された法律です。
「貨物利用運送事業」とは、自らがトラックなど輸送手段は持たずに、荷主から依頼を受けて実運送事業者を利用し貨物輸送を依頼・実施する貨物運送事業です。
貨物配送の手配だけを行って運賃を受け取る事業のことですが、物流業界では「水屋」と呼ばれることもあります。
電話一本あればスタートできる事業ともいえますが、貨物利用運送事業をスタートできれば、トラック運送事業者の傭車を利用し貨物運送も可能です。
「実運送事業者」とは、貨物自動車運送事業者以外にも船舶・航空・鉄道運送事業者を含みます。貨物自動車運送事業者だけを利用し輸送手配をするときには法規制の対象外です。
なお、貨物利用運送事業は次の2種類があり、許可または登録が必要となっています。
・第一種貨物利用運送事業…登録が必要
・第二種貨物利用運送事業…許可が必要
貨物利用運送事業では、貨物情報が集まる情報拠点である「ハブ」の役割があります。
物流会社から貨物情報を集めて、貨物輸送をそれぞれの運送会社に振り分ける「配車係」と同じ役割ともいえるでしょう。
運送会社にとって配車係が機能しなければ、業務効率が下がりますが、貨物利用運送事業も同様といえるでしょう。