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タンクローリーの横転事故を起こした運輸会社の末路は?

2016.08.30
分類:その他

2008年首都高速道路で発生した多胡運送(群馬県高崎市)のタンクローリーの横転・炎上事故を巡って、首都高速道路が復旧費用などの損害賠償を求めていた裁判。

 

 

 

東京地裁は多胡運輸と運転者に32億8,900万円という支払いを命じましたが、荷主の会社と元請運送会社は責任を問われることはありませんでした。この事故は多胡運輸が加入していた関東交通共済協同組合から2003年6月、11億8千万円が日本高速道路保有・債務返済機構から理事長)へ支払われているため、トラック業界では例の無い高額補償事案となっています。

タンクローリー横転事故の詳細について

 タンクローリーはガソリンスタンドへガソリン16キロリットルと軽油4キロリットルを輸送中、急カーブを曲がり切れずに横転して側壁に衝突し、運転者は重傷、積み荷は5時間半以上にわたり炎上するという大事故でした。路面のゆがみや橋桁の変形、道路はトロトロに溶け、近隣のマンションの外壁も焼けるといった被害が出るなど、首都高が全面復旧するまで2か月半かかっています。

裁判所の判決は?

 高架部分の架け替え工事にかかる費用が17億円、通行止めによる営業損失が認められました。事故の原因として20~30キロの速度オーバーによるカーブへの侵入と過失が認定されましたが、荷主の出光興産は指揮監督関係が運転者に及んでいたと認められなかったため使用者責任は問われませんでした。関東交通共済協同組合は全国トラック交通共済協同組合連合会に加入しており、再共済によって9億3,500万円の支払いを受けたことで多額の損失を回避しました。

多胡運輸がついには破産へ

 東京商工リサーチによると、2016年8月4日、多胡運送は前橋地裁高崎支部より破産開始決定を受けました。2016年7月、判決により多胡運送と運転手に32億8,900万円の支払命令が下されていましたが、高額な損害賠償を支払いできなかったため破産手続きとなったようです。

トラックなどの事故はなせ起きる?

 近年バスやトラックの重大事故が多発する背景には、過重労働や規制緩和の問題があると言えます。規制緩和に関しては事業区域規制も廃止され、結果として参入が増加し過当競争を引き起こしている状況です。運賃や料金も事後届出制に変わったことで、無理な単価で運送を引き受ける業者が蔓延してしまい重量を超えた過積載や長時間労働などが原因で重大事故に繋がっています。規制緩和は効率的に見えても、結果としてマイナスを引き起こす側面があるということを認識しておく必要があるでしょう。

万が一の事故には予防と備えが大切

 タンクローリーの横転事故によって多大な損害賠償を背負い、経営悪化から破産という結果をみてもわかるように、大事故は企業にとって大きな損失となります。事故が発生した際の損害賠償が高額になると、事業を存続することも難しくなるかもしれませんので事故予防はもちろん、損害賠償に対する備えもしておく必要があるでしょう。