運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送中に起こした事故費用はドライバーが自腹で払う?

2016.09.15
分類:その他

運送業者が所有しているトラックに経費削減の理由から車両保険を付保していない場合、衝突事故が起きて発生した修理費用の負担は会社とドライバーのどちらが責任を負う必要があるのでしょうか。会社からドライバーに損害賠償を請求するケースも事故状況によっては安全運転の注意義務を怠ったとしてドライバーに損害賠償を求めるケースがあります。ドライバーの過失が認められた場合には、会社に生じた損害賠償の責任を負うことになりますが全てをドライバーが負担しなくてはいけないわけではありません。

 

 

裁判所の判断は?

使用者はドライバーの加害行為で直接損害を被った場合、事業の性格、規模、施設状況、ドライバーの業務内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防・損失の分散についての使用者の配慮など事情や状況に照らし合わせて損害を公平に分担されることになります。例えばドライバーが過重労働にならないような勤務時間の設定や休憩時間の工夫、安全装置の物理的な予防策、指導、教育など事前防止策を会社が講じることが必要ですし、自動車保険に加入して損失の分散が行われるような対策についても事前に行っておくことができたのではないかと判断されます。

事前措置を会社が講じていたかどうかが問題

損害賠償額の範囲を決定するためには、会社が事前の対策を講じていたかどうかが大きく影響してきます。仮に事前措置を講じていた場合に事故が発生した場合でも、業務上の危険責任や報酬責任によりドライバーの損害賠償については制限されます。講じる必要のある事前措置は、社会に対して危険を作らないための措置と捉えられるため危険責任に対して防止策を講じているに過ぎないのです。そのため事前措置を講じている場合でも、報償責任が残っていることからドライバーに損害の全額を賠償請求することはできないでしょう。

事前措置は企業防衛に必要不可欠

それでも事前措置を講じていれば危険責任は減少します。ドライバーに損害賠償請求が認められる範囲が広がりますので全額を賠償請求可能となるのは故意による場合に限られます。事前措置を講じること社会的に要求されていることで、企業防衛のために必要不可欠なことです。

事故防止策に努めることが大切

トラック台数が多い場合には自動車保険の費用負担は大きくなるため、経費削減のために車両保険の付保を解除するということを検討することもあるかもしれません。しかし経費削減という理由で車両保険の付保を解除してしまうのは、会社が行うべき事故防止策の事前措置を会社が講じていないということになります。会社の存続、ドライバーの安全を守るために、事故を起こさないための取り組みや体制を構築していくことが必要と言えるでしょう。