運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送業で従業員が事故を起こした場合、損害賠償責任は誰に?

2017.01.03
分類:その他

従業員が交通事故により相手に損害を与えてしまった場合、従業員個人としては不法行為に対する損害賠償を請求されることになるでしょう。

しかし不法行為責任を追求する側は、加害者である従業員の過失を立証することが困難なケースが多く、立証できたとしても不法行為責任は加害者である個人に追求することとなりますので加害者個人に経済的な余裕がなければ損害の補填がされないという問題も出てきます。
このように被害者が泣き寝入りすることのないように、現在では自賠責法で運行供用責任が規定され、被害者側の過失立証の負担を軽減し、損害賠償の責任の範囲が拡大されています。


運行供用者とは?
運行供用者には、車を運転している人だけでなく車の所有者や車の使用から利益を得ている人も含まれます。
運行供用者責任が問われるのは他人の生命や身体を害した場合で、人身事故の場合にのみ責任が発生します。
そのため物損事故では自賠責法の運行供用者責任の適用はされず、民法による損害賠償請求を行うことになるでしょう。


損害賠償の請求を受けるのは誰?
従業員がトラックを運転中に事故を起こした場合、運行供用者となるのは運転手ではなく運送会社です。そのため損害賠償請求をされるのは運送会社になるでしょう。
運転手である従業員は民法に基づく不法行為責任に対する損害賠償が請求されることになると考えられます。


他にも損害賠償請求を受けると考えられるケース
従業員の勤務外や業務外での事故や、マイカー通勤中の事故の場合などは、会社の管理体制や業務との関連性などで運送会社が請求される立場になるのかが変わります。
例えば下請業者が起こした人身事故の場合、元請業者が様々な指示を出している状況下では元請業者が運行供用者となり損害賠償を請求される立場になるとも考えられます。


物損事故の場合の責任は?
従業員が人身事故を起こした場合ではなく、従業員が会社の車で物損事故を起こした場合はどうでしょう。この場合には、会社は民法の使用者責任を負うことになります。
従業員が事故を起こせば、人身事故でも物損事故でも結局は会社が責任を負うことになることを理解しておきましょう。


責任を負うのは会社だけではない?
そして事業を監督する運送会社の社長や車両担当者などは、会社と連帯して責任を負うことになります。
損害賠償を請求された会社が倒産してしまったケースでも、監督する立場にある人は損害賠償が請求され、社長の個人の財産から求償する必要が出てくることを理解しておく必要があります。


事故を起こさない対策を
運送業は交通事故のリスクが高い業種ですので、事故が起きないように普段から従業員に安全運転や事故防止についての対策を講じることを周知しておく必要があります。