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最大手ヤマト運輸が宅配料金値上げ?運送業は今後どうなる?

2017.03.08
分類:その他

メディアをにぎわせている宅配便最大手のヤマト運輸が、2017年3月7日、今秋にも荷物の宅配料金を法人向け、そして個人向けのいずれも値上げに踏み切る方針を明らかにしました。
全面的に宅配料金が値上げされるのは、消費増税時を除いた場合には何と1990年以来で27年ぶりとのことです。


ヤマトが値上げに踏み切った理由とは?
その理由として、インターネット通販が急増したことがあげられるでしょう。人材確保の負担が増加している状況は値上げという選択を強いられる結果となったと言えるでしょう。
インターネット通販大手であるアマゾンジャパンなど、ヤマト運輸の大口顧客とも運賃値上げ交渉に入っています。


人手不足は運送業全体の問題
人手不足に悩む宅配業者や運送業者はヤマト運輸だけではありません。トラック運送会社のうち、99%を占めるといわれている従業員300人以下の中小企業でも同じ悩みを抱えています。
このヤマト運輸の決断により、運賃全体の底上げへと繋げることができれば、ドライバーの待遇も改善しやすくなるので人員の採用にメリットが高くなる可能性があります。


ヤマト運輸の決断は中小にとっても良い風向きに?
中小の運送会社でも値上げ交渉の良い材料になると考えられるでしょう。ヤマト運輸同様に、インターネット通販の普及で仕事が急増したけれどドライバーが不足している運送会社も多くいます。
ドライバー不足を補うには人を新たに雇用する必要がありますが、低賃金で過酷な労働では求人を出しても応募が増えません。
そのため荷主へ運賃引き上げを請求し、受け入れられた場合には従業員の給与を上げて新規採用への糸口にすることを検討しているようです。


実際のところトラック運賃は高値続き
トラック運賃は高値傾向が続いていて、例えばスポット契約で10トン車1台分の荷物を運ぶ貸し切り運賃の場合には、東京から大阪間で片道1回7~8万円という金額になっています。昨年末の繁忙期だと15万円を超えるケースもあったようです。


世間に運送業の苦しさが伝わった?
しかしまだまだ中小の運送会社は立場が弱く、値上げに踏み切れずにいる会社も多いようです。
そのため今回の最大手のヤマト運輸でも状況が苦しいということが社会的に伝わったことで、無料で配送することが不可能だという認識を荷主や消費者に定着させることができ、それが人手不足を解消する糸口になるかもしれません。


ヤマト運輸は今後どのような策を取る?
今後ヤマト運輸は、再配達は荷主と共同で削減に取り組み、協力してもらえない場合には運賃体系に反映する有料化を検討する方向です。法人向けには繁忙期の割増運賃の設定も検討するということでしょう。
また、配達の時間帯指定サービスの中で「正午~午後2時」を廃止し、宅配ロッカー設置を促進、未払い残業代の支給により労働時間の管理なども体制を整備していく傾向です。
値上げやサービスを縮小することはシェアを失ってしまうことになるかもしれませんが、利益のない繁忙に甘んじていた産業界には大きなインパクトを与えるでしょう。


今後は中小の運送会社も交渉しやすくなる?
最大手のヤマト運輸が値上げに踏み切ったことにより、トラック運送の過酷さが世間に伝わったことでしょう。これによって中小の運送会社も、値上げ交渉などを行いやすくなる可能性もあります。