運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

法律に違反した残業で訴えられる運送業の問題とは?

2017.03.10
分類:その他

過剰労働が問題になっている宅配便最大手ヤマト運輸ですが、さらには巨額の残業代が未払い状態であることが明らかになりました。
ヤマト運輸はサービス残業が常習化している法律に違反した状況を認め、グループの約7.6万人にものぼる社員を対象とした未払い残業代について調査を開始しています。
調査結果次第で、社員たちに対する未払い残業代は総額で数百億円になる可能性もあるようです。


現場から聞こえる悲痛な声とは?
ヤマト運輸は2016年11月に元セールスドライバーの男性によって、違法な残業の実態について告発されています。
原因となったのはインターネット通販大手のアマゾンの荷物を取り扱うようになったことで、荷物が何割か増えているのに人手不足で苦しい現場の状況について訴えられました。


残業代の未払いが置きやすい労働管理体制
ヤマト運輸の実態を告発したドライバーの話しによると、ドライバーにはそれぞれ業務用の携帯端末が配布され、端末が稼働している時間が労働時間としてカウントされていたそうです。
配送が終わって支店に戻ったドライバーは、入金処理と端末からその日の稼働データを提出しますが、その日の業務はそれで終了ではありません。
端末切断後には伝票作成の入力や翌日の配送準備、新規の荷主データの入力など、様々な業務があった上に昼食休憩も形骸化という状況だったようです。
しかも仕事は増えたのに賃金は上がらない状況が続く
そもそもアマゾンの荷物は宅配業界2位である佐川急便が引き受けていたものの、運賃値上げ交渉が決裂したことで提携が解消されました。
そこでアマゾンの荷物のほとんどはヤマト運輸が引き受けることになったようですが、端末には記録が残らない業務であり、賃金として支払われていなかったようです。


なぜ運送業は過重労働になりやすい?
宅配現場の過重労働が改まらない理由として、ドライバーの労働条件が改善されることが明らかに後回しにされている傾向が強いということがあげられます。
ヤマト運輸にしても、大手通販企業と値上げ交渉をして収入を確保していたのなら、その分がドライバーに還元されていなかったのは経営の責任だと言えるでしょう。


残業代の問題は企業規模に関係なく起きている
ドライバーが未払い残業代に対して、運送会社に提訴するケースは中小のトラック運送会社でも見られています。
トラック運送は確かに時間外が発生しやすい業種であると言えるでしょう。しかし運賃が安くて経費がかかるので未払い残業代は仕方がないだろうという事情は通用しません。


運送会社が訴えられないために
ドライバーにとっては未払い残業代の請求は濡れ手に粟である上に、一部の法律家などが絶対に勝てると煽っている傾向もあるため運送会社はいつ訴えを起こされてもおかしくない状況でしょう。
解決するためには法律にもとづいた適正・適法な勤務や賃金の体制作りが必要となります。実態に合った就業規則を作成して、働いた分は給与として貢献する当たり前のことを行うことが必要です。