運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送事業に多い労働の違反は?問題視される労働者の健康被害

2017.04.07
分類:その他

運送事業は長時間労働の実態があることで、過労による脳や心臓疾患で労働災害に認定されるケースが多くあります。
大阪労働局の平成27年の定期監査によると、運送業者の約6割が長時間労働による違反が発覚しています。
しかし過労で起きる交通事故は、運転者だけでなく第三者も巻き込まれる可能性もありますし、荷役作業中に事故が起きることもありますので注意が必要です。


調査結果の内容によると
大阪労働局による調査によると、運送業の違反率は全業種の中で最も多く過酷な労働が労災件数に反映していると考えられています。
この調査では大阪府内の道路貨物運送業の事業所261か所を対象に行われていますが、その中で153か所(58.6%)で労働時間の違反が発覚しています。


36協定が締結されていない残業
労働時間は1日8時間、週40時間までと定められていますが、残業を可能とするには労働基準法36条に基づいて「36(さぶろく)協定」を事業者と労働者間で締結し、労働基準監督署に届け出を行うことが必要です。
この36協定という労使協定が締結されていないのに、法定時間を超えた労働や協定での限度を超える労働は違反となります。


厚生労働省による調査と指導は?
過酷な労働により健康被害を訴える労働者も多く、平成25年度の厚生労働省の調査では脳や心臓疾患による死亡や事故の労災件数は全ての業種で306件でしたが、道路貨物運送業はこの中でも最多の94件だったというデータもあります。
さらに2017年1月の厚生労働省は、全国1
59事業場に対して実施された2016年4月~9月に「長時間労働が疑われる事業場」に対する労働基準監督署の監督指導の結果が発表されています。

・労働時間の違反が圧倒的多い
この監督指導は、1か月に800時間を超えての残業が疑れる事業場、そして長時間労働で過労死などに関する労災請求があった事業場を対象に実施されました。
全国159事業場のうち、約43.9%に該当する4,416事業場で違法な時間外労働が確認され、今後の改善や是正に向けての指導が実施されました。
月80時間を超えて残業されていた事業場は78.1%に該当する3,450事業場でした。

・運送業も同様に時間外労働による違反が最多
この中で運輸交通業は1,210事業場に監督指導を実施し、72.7%にあたる880事業場で労働による法令違反が確認されている状況です。
どのような法令違反があったかというと、「違法な時間外労働」651件、「過重労働による健康障害防止措置の未実施」116件、「賃金不払い残業」55件という内容だったようです。
このように多くが決められた労働時間を超えた労働という内容で、それ以下の法令違反も時間外労働によることが影響する違反ということがわかります。


労働時間の見直しが必要
運送業での違反は多くの場合労働時間による違反ですが、それによって様々な事故を引き起こす要因となります。
事業場では労働時間について見直しを行い、労働者が安心して働ける環境を整備する必要があると言えるでしょう。