運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送業の損害賠償リスクとは?労働者と使用者どちらの責任?

2017.06.06
分類:その他

運送業は業務を遂行する上で、様々なトラブルが起こる可能性があります。
例えば運送会社の労働者が勤務中に不注意で事故を起こし、会社のトラックと積み荷を破損した場合、労働者にトラックの修理代と積み荷代を全額負担してもらうことは可能なのでしょうか?


労働者が弁償するのは損害の一部
労働者の不注意など業務上の過失により使用者が損害を受けた場合には、労働者に対して損害賠償請求を行うことになるでしょう。
この場合、使用者は民法の規定によって労働者が労働契約上の債務を履行していないことによる損害賠償の請求、そして故意・過失で損害を与えられた不法行為による損害賠償を請求することが考えられます。
さらに労働者が第三者に対して損害を与えたことで使用者が損害賠償をした場合には使用者は労働者にその費用を求償することも可能です。


指揮命令で働いた使用者の全責任は不公平
ただし労働者が使用者のために、指揮命令下での業務遂行の過程で発生した損害の全部を労働者が弁償するのは不公平です。
実際に業務内容によっては損害が発生する危険を伴うものもあるでしょう。そのため労働者が弁償する範囲は損害の全てではなく一部であると考えられるでしょう。


労働者と会社がしっかり話し合いを行うこと
実際に労働者がどの範囲で責任を負うかについては、それぞれの事故にケースなどの実情に応じた判断になるでしょう。
そのため会社と労働者が十分話し合いをしながら、具体的な損害賠償額について決めることが望ましいと考えられます。
会社所有のトラックは通常であれば保険に加入していますので、そこから補償されることを考えると過大な負担を労働者に請求しないことにも注意が必要です。


運送業で考えられる事故や賠償責任
輸送中や保管中、作業中に事故が起こる可能性もありますし、委託した下請業者が事故で貨物を損傷させる可能性もあります。
さらに荷物を運搬している時にその荷物が壁などにぶつかって壁を破損させたり、荷卸のために借りたフォークリフトが破損したりと、作業をしていく中では思いもよらない事故が起きることが考えられます。
もし賠償責任がないと判断されたとしても、事故対応には調査費用や見舞金、弁護士への相談費用など色々な費用が発生します。


いざという時のために保険への加入を
労働者に対する賠償請求をしても、その請求できる範囲などで損害の全てが補償されるとは限りません。
そのため受託した貨物などが事故で損壊した場合の損害賠償責任を負担する保険に加入して備えておくことが必要です。
運送業に適した賠償責任保険に加入することが、起こりうる様々な損害賠償リスクに対応できることに繋がります。