運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送会社で従業員が起こした事故に対する賠償請求は可能?

2018.05.18
分類:その他
もし運送会社で働いている従業員が事故を起こしたことで会社が損失を受けた場合、その損害賠償に対する請求を行うことは可能なのでしょうか。

全額賠償請求は困難だけれど・・・

結論からいえば、従業員の過失の程度や、会社による加害行為の予防、損失の分散などへの対策などを考慮した上での判断となるため、仮に故意でなければ全額請求することは難しいと考えられます。 民法第709条によると、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という記載がありますが、過去の裁判例において使用者は、損害の公平な分担という部分からも、相当と認められる限度で労働者に対して損害賠償を請求することができるとしています。 そのため、加害行為を予防することや損失の分散に対する事前対策をどの程度行っているかによって、賠償額を左右すると考えられるでしょう。

従業員の注意が不足していただけ?

例えばトラック10台程度保有している運送会社が、経費節減のために車両に付保していた車両保険を解約したとしましょう。 従業員には車両保険を解約するため、安全運転を今以上に心掛けることを周知していたのに、高速道路走行中に先行車を追い越そうとして衝突事故を起こしてしまい、車両修理代が約50万円かかったとします。 ・路面の状況や整備点検に問題はなかったか 経営者としては安全運転を心掛けるように伝えていたのに!と思うかもしれませんが、路面が凍結していた場合や雨で滑りやすくなっているなどでスリップしてしまった場合や、タイヤが摩耗していて滑りやすくなっていたというケースもあるでしょう。 このようなケースにおいて、損害賠償を求める訴訟を提起した場合、路面が凍結した状態でタイヤが摩耗していることを認識していたのなら、従業員は車両の運転者として事故発生を防止するための注意義務を怠ったと判断できます。 ・会社で講じることができる対策はなかったか しかし、過重労働にならないための勤務時間や休憩時間の工夫や、また安全装置等の物理的予防策、さらに教育・指導での事前防止策を講じること、そして損害保険に加入するといった損失の分散など、会社も事前に対策を講じることは可能なはずです。

従業員の故意でない限り全額賠償請求は難しい

このような事前措置をどこまで講じていたかによって、損害賠償額の範囲は決まることになるでしょう。会社の危険責任は減少させることはできても、報償責任という部分から判断されるのは、従業員が故意に起こした事故でない限り損害全額を賠償させる事は出来ないという事です。