運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

運送業者で未払い残業代が問題視される背景と予防のために行う事とは?

2018.06.04
分類:その他
2015年に大手広告会社の社員が過労による自殺をした事は記憶に新しいところですが、その背景には100時間以上の残業という実態がありました。さらに2017年には大手運送会社のドライバーに対する残業未払いが問題化され、労働基準監督署より是正勧告を2度に渡り受けていた事が発覚しています。 このような長時間労働が労働者に及ぼす負担や危機は生命を左右する問題と考えられるため、社会的な目も非常に厳しくなっていると言えるでしょう。法令違反すれば事業者に対して厳格な処分が下される事になりますので、運送業者でも長時間労働や未払い残業代について注視しておく必要があります。

なぜ運送業で残業代が問題視されやすい?

そもそも運送業は残業代についての問題が発生しやすい業界ですが、長距離トラックのドライバーなどは積み下ろしの順番待ちの時間が長くなったり、渋滞予測が困難であったりという労働時間が長時間に渡りやすい環境です。 さらにタコグラフなどで労働時間が明確になる事から、労働時間を客観的に証明する証拠が残りやすいですが、固定残業代制を採用している業者が多い事で問題化しやすいと言えるでしょう。

固定残業代制が無効とされるケースもある

そのような中、適切に雇用契約書や就業規則の規定がされておらず、固定残業代制が違法であると判断されれば残業代の支払い義務が生じてしまいます。 通常であれば残業時間に応じた残業代が支払われますが、残業時間に左右される一定額を残業代として支払うのが固定残業代制です。 この固定残業代制が無効と判断されれば、残業代が1円も支払われていないと判断されるため、固定残業代制で支払った残業代よりも多く未払い残業代が発生する事になってしまいます。

固定残業代制の採用前に確認しておきたい事

そこで、固定残業代制を採用するのであれば、無効と判断されない方法で労働者と取り決めを行う必要があります。 規定した残業代は労働契約の内容になっているか、固定残業代部分は固定給と明確に区分されているか、固定残業代制で定められた時間を超えた場の残業代は割増賃金が支払われているかを確認してください。 また、規定した時間が45時間を超える場合、固定残業代部分が最低賃金や割増時間外手当を下回る場合も問題になるので注意しましょう。

未払い残業代が起きないようにするために

今後、運送業者に対してドライバーから未払い残業代を請求するといった問題は増える事も考えられます。就業規則や雇用契約書の内容を確認すると同時に、労働時間の管理体制を改善する事も併せて行う様にしましょう。