運送業でトラブルになりやすい残業代の問題とは?
いくつかある業界の中でも、運送業は特に残業代が発生しやすい業種であるといわれています。
労使トラブルなどが起きやすくなると、賠償金請求などの問題で事業に支障をきたす恐れもありますので、なぜ残業代が発生しやすいのか、事業を継続する上で何に注意すればよいのか確認しておきましょう。
なぜ運送業は労働時間が長時間になりやすい?
長距離を走るトラックドライバーは、途中渋滞が発生していることを予測できなかったり、積み下ろしまでの順番を待つ時間があるなどで、想定していた労働時間より勤務が長くなりがちです。
それらの事実は、例えタイムカードなど利用していない場合でも、デジタルタコグラフにデータが保存されるので、未払い分の残業代を請求する際に客観的な証拠として提出されやすくなるといえるでしょう。
固定残業代制を採用する場合には注意が必要
運送業では「固定残業代制」により給与を支払っているケースが少なくありません。しかし、就業規則や雇用契約書などにはその規定が適切になされていないことが多い点に注意しましょう。
本来であれば残業代は残業を行った時間に応じた支払いになりますが、何時間残業したのかに関係なく、一定の残業代を支払う方法が固定残業代制です。
従業員のモチベーションを向上させることもできますし、残業時間を抑えることもできるので、メリットはいろいろありますが、この固定残業代制が無効であると判断されてしまうと、後に多額の未払残業代を支払わなければならない事態に追い込まれます。
そこで、固定残業代制を採用する場合には、
・労働契約にその内容が記載されていること
・固定残業代に該当する部分が固定給と明確に分けられていること
・固定残業代制で定められた時間を残業時間が超えた場合、割増賃金を支払うこと
などに注意してください。また、45時間を超える時間の設定や、固定残業代部分が割増時間外手当額や最低賃金を下回る固定残業代の設定も当然問題となりますので気をつけましょう。
委託契約にすれば労働法の適用を回避できる?
なお、ドライバーとの間で、雇用契約ではなく委託契約にすれば、労働法の適用外になるので残業代の問題は解決されるのかといえばそうではありません。
労働法が適用されるかどうかは、労働形態だけで判断されるのではなく、運送会社の指揮・監督下にあるのかということや、勤務時間や場所の定めなど様々な事情を考慮した上での判断となります。
仮に労働法が適用されないとしても、運送業の場合、下請法や独占禁止法、物流特殊指定に加え、下請・荷主適正取引推進ガイドラインなど、いろいろな規制が存在します。
すべてに照合し、もし労働した時間や内容よりも委託契約で支払った金額が安いと判断されれば、適正価格との差額を支払う必要が出てくる可能性があります。
安易に労働法の適用を回避するため、委託契約を選択することは避けるようにしてください。