運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

荷主に対する損害賠償責任は運送事業者にとって大きなリスク

2020.12.07
分類:その他
トラック運送において、荷台の貨物がもし交通事故などで破損してしまったとしたら、その損害賠償はトラック事業者が荷主に対し行うこととなってしまいます。 交通事故が発生する状況はいろいろですが、事故が起きる前後の振る舞いで立場はより厳しくなることもありますし、反対に賠償を最小限に抑えることができることもあります。 事故が起きてしまった後も、引き続き取引を行うことを望むのかどうかにより、対応も変わってくるでしょう。 たとえばどこよりも安い運賃で仕事を引き受けているのに、損害賠償は何千万円というケースが発生してしまうのは公平さが保たれず、設定されている運賃や賠償責任の所在など契約内容について見直しも必要となるでしょう。

日本の運送中の貨物破損に対する賠償責任の慣行

日本では、運送中の貨物が全損してしまうと、貨物の賠償は運送事業者が時価で責任を負うという慣行にあります。 その金額をどこにも転嫁できず、運送事業者の受け皿としての賠償責任保険などに加入することで備えるといったことがほとんどでしょう。 そして日本では運送人の損害賠償限度額は国際間輸送だけに適用されるもので国内輸送とは関係がないと考えられています。しかし欧米の場合は、国際間と国内輸送で運送人の損害賠償額に上限を設けており、運送人の故意・重大な過失で発生した事故以外は、欧米では限度額の範囲で損害賠償が行われているという点が違いといえるでしょう。

運送人が負う損害賠償責任への備えが重要に

荷主から貨物を預かり輸送・保管を行う運送人は、運送・受諾契約などに基づいて安全に貨物を目的地まで輸送し、荷主に引き渡さなければなりません。 そのため運送人に原因があるケースで貨物に損害が発生してしまったときには、運送・受諾契約などに基づき、荷主から運送人に対し損害賠償請求をすることができるとされます。 荷主が保険に加入していたとしても、損害賠償責任は消滅してしまうものではありません。 発生した損害について、荷主が保険会社から保険金を受け取ったときには、損害に対する損害賠償請求権は荷主に代わり保険会社が取得することになります。 そして保険会社はその権利を行使し、運送人に損害賠償請求を行うという代位求償の流れで請求されます。 運送人はこのような万一に備え、発生する損害賠償リスクを転嫁できる対策を講じておくことが必要ということです。