運送業は付帯業務を別途収受できているのか?約款改正から数年後の現場の状況
長時間労働や付帯業務の改善や賃金の見直しなどは、運送業のドライバーの待遇を改善させるためにはどちらも必要なことです。
これは国土交通大臣が令和2年4月に告示した「標準的な運賃」が関係しており、安定した輸送力を確保するための取り組みとして欠かせないとしています。
そもそも経済活動は自由化が主流であり、国が関与することは困難とされていましたが、運送業界の場合には自助努力だけで解決できないことも多く、標準的運賃が告示されたことは業界にとって画期的だともいえます。
平成30年12月には貨物自動車運送事業法が改正され、法令を遵守しない悪質なトラック運送事業者には厳正な措置が取られることとなりました。
さらに注目したいのは、平成29年11月に一部が改正となった「標準貨物自動車運送約款」ともいえます。
一部改正された「標準貨物自動車運送約款」で記されていることとは
「標準貨物自動車運送約款」の一部が改正されたのは、適正運賃の収受についてすること、積込料・取卸料・荷待時間は付帯業務として運賃とは別途収受可能とする環境を整備するためです。
これまで運賃に含まれていた付帯業務を分けることにより、あいまいな業務も明確化させることができるでしょう。
本来は荷主と運送事業者にも浸透させようと改正されたのに、実際には少しずつ届け出は増えているものの、これまでの慣行などが邪魔をして新約款が適用されにくい状況にあるといえます。
ドライバーがフォークリフトを運転し、荷積み・荷下ろしすることはめずらしいことではありません。手積み・手下ろしの他、納品先でも先入れ・先出しの手伝いをしなければならないといったことが通常行われています。
新約款では、これらの付帯業務は別料金が発生することになりますが、実際には運送会社の負担で行われている状態です。
約款改正に伴う交渉も容易ではない
商習慣を変えることは簡単ではないため、たとえ約款が改正されたとしてもそれをもとに交渉することは容易ではないようです。
すでに約款が改正されて3年以上経過した今も、まだ十分に浸透されていない状況が続いています。
ただ、罰則が発生する時間外労働の上限規制も、運送業は2024年には適用の対象です。様々な部分で改革していかなければ、コンプライアンス違反に問われることになると理解しておくことが必要といえるでしょう。